【あらすじ】AI VS 教科書が読めない子供たち 新井紀子【感想】
東ロボくんは東大には入れなかった。AIの限界ーー。しかし、”彼”はMARCHクラスには楽勝で合格していた!これが意味することとはなにか? AIは何を得意とし、何を苦手とするのか? AI楽観論者は、人間とAIが補完し合い共存するシナリオを描く。しかし、東ロボくんの実験と同時に行なわれた全国2万5000人を対象にした読解力調査では恐るべき実態が判明する。AIの限界が示される一方で、これからの危機はむしろ人間側の教育にあることが示され、その行く着く先は最悪の恐慌だという。では、最悪のシナリオを避けるのはどうしたらいいのか? 最終章では教育に関する専門家でもある新井先生の提言が語られる。
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感想とあらすじ
センセーショナルなタイトルで目を引き、大げさなことを言って危機感を煽っているだけの作品だろうと思いながら読んでみると表紙の通り衝撃を受けた。
作者の新井紀子氏は数学者でありながら教育の専門家でもあり、一般社団法人「教育のための科学研究所」の代表理事・所長を務めている。
AIがどういったもので、どういう作業が得意で、どういう作業が不得意なのかを簡潔に説明しつつ、東ロボくんのプロジェクトの過程で学生の読解力に疑問を持ち、教科書が読めていない実態に気づく。このままだとAIに仕事を奪われ、AIが不得意な分野の仕事に就くことができなくなってしまうという警鐘を鳴らしているといった内容である。
AIとは
私がAIと聞いて想像するのは、SF映画などでホログラムによって映ったAIと人間が、人間同士と全く変わらない会話をしている映像が思い浮かぶ。
しかし、AIとはそういうものではなく、論理と確率によって導き出したものを表している”計算機”でしかないという。
なぜならAIは数学によって表したものしか扱えず、数学に変換できないもの(感情など)は理解することができないからだ。
東ロボくんのセンター試験挑戦での英語学習でも150億文の英単語を覚えさせても偏差値50を超えるのがやっとという結果だった。
ネイティブスピーカーでもびっくりな数の単語を覚えても、文章を文章と認識できず、穴埋め問題に片っ端から埋めてみて、一番検索にかかるものを選ぶことでなんとか正答するということらしい。
なんだ、AIはまだまだなのか。
そう思いそうですが、ルール化された状況には非常に強く、また人間と違い疲れ知らずなので、単純作業も人間を凌駕しています。
AIによってなくなるであろうという仕事で、新井氏は半沢直樹を例に挙げ、2013年(半沢直樹が流行っていたころ)に披露していましたが、2016年にはジャパンネット銀行が融資審査にAIを導入するなど現実化してきています。
ルール化しやすい仕事は、これからどんどんAIに置き換わるだろうと思うと怖いと感じました。
AIにできない仕事に就けるのか
AIが苦手な作業は、数学にできない分野の仕事です。
そこで必要になってくるのは、AIが苦手としている読解力とコミュニケーション能力になってきます。
しかし、大学入試を終えたばかりの大学生を調査したなかで、大学のレベルによって問題文を読む読解力に差があることがわかりました。
例題
次の報告から確実に正しいと言えることには〇を、そうでないものには×を、選択肢から選んでください。
公園に子供たちが集まっています。男の子も女の子もいます。
よく観察すると、帽子をかぶっていない子供は、みんな女の子です。
そして、スニーカーを履いている男の子は一人もいません。
①男の子はみんな帽子をかぶっている。
②帽子をかぶっている女の子はいない。
③帽子をかぶっていて、しかもスニーカーを履いている子供は、一人もいない。
本文より引用
答えはわかったでしょうか。
正解は①だけです。
詳しい解答は本書を見て頂くとして、この問題の正答率は64.5%です。
高学歴といわれるレベルの大学では85%が正解しているなかで、有名私大クラスで66.8%、下位クラスの大学では50%を下回る結果となっています。
知識も知恵も必要のない「読めばわかる」問題ですが、こんなにも差が出ることに驚きました。
これにより作者は、どこの大学に入学できるかは読解力が重要だと確信します。
これからどのような仕事がなくなり、生まれてくるかはわかりませんが、大まかなながれとしては画一的な勉強の成績が出る学歴が重要ではないでしょうか。
専門的な技術があればとも言えますが、何を学ぶにしても文章を読んで理解する力は必ず必要です。
仕事を巡ってAIと競合しないためにも読解力を上げることがとても重要ではないでしょうか。
さいごに
いろいろなものが発明されることで、くらしは便利になり豊かになりました。
その反面で仕事を奪われた職業も多々あったでしょう。
今回AIの出現はこれまでとはまた違った社会の変化を起こすのかと思います。
例題のような問題は他にも紹介されていますが、私自身も間違う問題も多々あり、こんなにも文章をちゃんと理解できていないものなのかと恐ろしく感じました。
子供を持つ親としては、ぜひとも読解力を付けてたくさんのことを知ってほしいなと思いました。
続編として読解力を伸ばす方法も紹介されていますので、ぜひ読んで感想を書きたいと思います。