【あらすじ】帝都大捜査網 岡田秀文【感想】
帝都大捜査網 岡田秀文
死体が発見されるたびに、なぜか刺し傷の数はひとつずつ減ってゆく。殺された男たちのあいだに交友関係などは一切見つからず、共通しているのは全員が多額の借金を背負っていたことのみ。警視庁特別捜査隊は奇妙な連続刺殺事件の謎を追い、帝都全体に捜査の網を広げてゆくが――。捜査隊隊長が目の当たりにした、事件の異様な構図とは? 『黒龍荘の惨劇』が話題を呼んだ時代推理の雄が満を持して放つ、全体像を最後まで掴ませない油断厳禁の長編推理!
昭和初期の東京を舞台とした連続刺殺事件を中心に、できて間もない特別捜査隊が捜査していくストーリー。
特別捜査隊とは今でいうFBIのような凶悪犯罪を扱う組織のはしりである。
見つかった被害者は互いに交友関係になく、それまでの地位や財産を失った共通点のみがあった。
また、遺体の刺し傷が発見されるごとに1つずつ減っていくという謎に包まれた事件だった。
現代のように防犯カメラがあるわけでもなく、警察の”足”による地道な捜査が見どころのひとつだ。
また、事件に巻き込まれる”被害者”側の視点もあり、事件の内側からも楽しめる作品となっている。
なぜこのような事件が起きたのか。
刺し傷の謎はいったいなんだったのか。
少しずつ明かされながらも最後まで緊張させられる作品だ。
以下、ネタバレを含みますので未読の方はご注意ください。
この作品も長い間読みたいリストには入っていたが、ようやく日の目をみることになった。
あらすじもすっかり忘れてしまって、わずかな記憶とタイトルから警察ものということだけ覚えていた。
この前に読んだ本も警察ものだったので、ジャンル被りだなと思いつつページを繰った。
arasuji-library.hatenadiary.com
数行読んで時代物とわかり、科学捜査が十分でないだろうから違った楽しみができそうだと期待した。
電話すら満足にない昭和初期で、完全な足による捜査は創作であれど大変さが伝わる。
語り手が捜査隊隊長だったので、このまま犯人逮捕までいくのかと思っていたが、中盤に差し掛かると全くの別人の視点になり物語が一変。
連続刺殺事件の被害者(正確には加害者なのだが)の視点になり、この事件の真相を明かすことになる。
地道な捜査だけでは犯人逮捕後の説明で間延びしそうだが、この展開になったおかげで別作品のように楽しめた。
借金まみれの追い詰められた人間を集め、じゃんけん大会を開き、勝ち残った一人が総取りするという一世一代の勝負が行われていた。
じゃんけんというのが時代に合っていて、とてもよかった。
出す手による心理戦や、騙しあいなど臨場感のある表現で楽しめた。
むしろこっちがメインになるほど面白く、適切なものがパッと思いつかないがタイトルで損をしているような気さえする。
最後に隊長の娘に対する叙述トリック。
違和感だらけだったので真相がわかったら納得した。
そりゃ帽子屋の店員さんも市電に乗り合わせた女学生も困惑するはずだ。