【あらすじ】ドラゴンスリーパー 長崎 尚志【感想】
ドラゴンスリーパー 長崎 尚志
「大作映画のようだ。困るなー。俺より面白いんじゃないか?」と今野敏氏も驚愕!
伝説の元刑事とイマドキ刑事、執念の捜査行。
パイルドライバーの異名をとる元刑事久井重吾の元に訃報が届いた。元上司が残酷な手口で殺害されたというのだ。しかも十三年前の未解決少女殺害事件の手口と酷似していた。イマドキの刑事中戸川俊介とコンビを組み、アドバイザーとして捜査を開始した久井。やがて、元上司が引退後も追っていた未解決事件の裏に、不法滞在中国人の存在が浮かび上がり、県警警備部も事件を追っていることが判明。直後、第二の殺人が。謎が謎を呼ぶ事件の犯人の正体は。
進化を遂げた警察ミステリー!
今どきの20代を生きる刑事 中戸川と、定年退職した元刑事 久井による警察ミステリーのコンビもの。
”今どき”と聞くとラノベの主人公のような巻き込まれ型主人公や、妙に冷めているようなキャラクターではない。
自分自身の在り方や、刑事としてやっていく自信のなさなど、誰もが悩み通ってきた道を生きている青年に過ぎない。
自分と同年代ということもあり、同じような悩みを持っていることに主人公に感情移入することができた。
さて、本作は久井の元上司が13年前に起きた未解決事件の殺害方法と同じ手口で殺されたことで物語が始まる。
未解決事件では冤罪を起こしたため、慎重な捜査を要求されることになり中戸川と久井のコンビが再結成されることになった。
被害者の元上司は定年後も上記の未解決事件を個人的に捜査していて、何か犯人につながる証拠を掴んだために殺されたようであった。
13年前当時の元上司は別の事件である、在日中国人二世惨殺事件の捜査を担当していた。
元上司が未解決事件に関わっていないにも関わらず関心を持っていたことで、久井は2つの事件がつながっているのではないかと推測し捜査を進めていくことになる。
それは元上司の教えを、元上司のあとをなぞるように。
また、作中でウェールズ神話にも触れていくことになる。
神話はとっつきにくいイメージがあり、読んだことはなかったが、本作で触れてみて意外と面白かった。
久井はこの物語を「いじめの連鎖の話」と評しており、この物語が事件解決に一役買うことになる。
人間が動物である以上、いじめの連鎖とは変わらないものなのだろうか。
非常に考えさせられる内容であった。
警察ミステリーというと堅苦しく、窮屈なイメージがつきものではあるが、本作にかんしてはそのようなことはなく読みやすい。
前作は世田谷一家殺人事件を題材にして書かれた「パイルドライバー」だったが、本作も元ネタとなる事件があるのだろうか。
少し調べてみたが見つからなかったので、知っている方がいれば教えていただきたい。