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【感想】友達以上探偵未満 麻耶 雄嵩【ネタバレ】

 

友達以上探偵未満 麻耶 雄嵩の感想です。

 

本書のあらすじはこちら

 

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内容にはネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麻耶さんの作品はこれが初めてでした。

記憶があいまいだが「このミステリーがすごい!2019年版」で本書を知ったと思う。

新しい作者や作品を探すにはこういった本があるととても助かる。

 

 

 

 

さっそく本書の感想だが

文体は自然で、変な比喩表現もなく読みやすかった。

出だしの印象からキャラクターものかとも思ったが、ミステリーとしてもしっかりと脇を固められていて推理が楽しかった。

短編3作と少ないと感じたが、内容とのバランスがちょうどよく絶妙な文量だった。

 

麻耶さんを全く知らず、恥ずかしい限りだが

文章から若いイメージがあったため、年齢を調べたときにはびっくりした。

たくさん作品を書いていらっしゃる方は観察力や新しいものの吸収力もあるのだろう。

正直、脱帽です。

 

 

伊賀の里殺人事件

主役2人の説明で、以前から事件を解決していたり、話題として上がっていたので前作があるのかと調べてしまった。

調べた限りではないので、登場人物のバックボーン形成のためだったのかと思う。

忍者の衣装によるトリックと、被害者が加害者だったという発想の入れ替わりの物語の展開に夢中になった。

 

復讐のために殺人を計画して、実行犯を準備したら

まさか勘違いで殺され、その本当のターゲットが自分だったとは思わなかっただろう。

 

愛情と憎悪は紙一重だが、愛する人のために殺人を犯すのはどうなのだろうか。

自分に置換えてもちょっと考えつかない。

 

ももの「俳句の見立て」案を捨てることなく、それを生かして犯人を絞り込むのはとてもよくできていた。

アリバイがはっきりしない中で、1人に絞り込んだのはすごかった。

 

 

夢うつつ殺人事件

冒頭の犯人たちと思わしき会話がいまいちかみ合っていないことに気づいていたが、真相までは自分でたどり着けなかった。

初維への脅迫と、愛宕の殺人が別の事件とは思わず、犯人の特定まではいけなかった。

ロジックがわかればなんてことのないことだけど、謎の展開や紐解き方はとても上手い。

贅沢をいえばこの短編にも見取り図が欲しかった。

後姿を見たとか、位置関係が少し想像しずらかった。

 

 

夏の合宿殺人事件

ももとあおの出会った頃の話で、先の短編で少しずつ出てきた設定なども回収されていく。

犯行前の状況、発見後の行動などあおの行動が完璧すぎて、劣等感を抱くももには同情した。

何においても自分より優れた人がいるのがほとんどの人に当てはまるので、共感してもらえると思う。

自分が好きなもの、目指しているものだと余計にそうだと思う。

 

得られた情報から論理的に推理を進めるあおが、唯一懸念していたところをももの直感で補っていくのはパートナーものとしてはたまらない展開。

また、そこからももが前面に出るだけではなく、あおも推理を再構築して2人で解決した流れはとても良かった。

探偵を目指す2人だからこそで、片方が無知のワトソンにならないのも新しく感じた。

 

 

最後に

280ページで短編3つという決して長くはないので、気軽に読めるのはとても利点だと思う。

主人公の名前がももとあおで、ひらがななのは文章次第では読みにくくなるのは仕方がないが、読むリズムが狂うところだった。

他にも「メルカトル鮎」シリーズなども書かれているので、ぜひ読んでみたいと思う。