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読書したいけど読みたい本が見つからない人のためにあらすじを紹介して読書の参考にしてもらいたいです。

【あらすじ】その可能性はすでに考えた 井上真偽【感想】

 

 その可能性はすでに考えた 井上真偽

 

山村で起きたカルト宗教団体の斬首集団自殺。唯一生き残った少女には、首を斬られた少年が自分を抱えて運ぶ不可解な記憶があった。首無し聖人伝説の如き事件の真相とは? 探偵・上苙丞(うえおろじょう)はその謎が奇蹟であることを証明しようとする。論理(ロジック)の面白さと奇蹟の存在を信じる斬新な探偵にミステリ界激賞の話題作。

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探偵事務所に昔の殺人事件の捜査を依頼するというオーソドックスな形で物語が始まるが、容疑者である依頼人は首を切られた少年に運ばれた記憶があり、それが奇蹟であるのかを証明しようとするストーリー。

面白いのは1冊かけて捜査をして照明していくとおもいきや、第1章ですぐに捜査を終えて依頼人に報告書まで渡してしまう。

探偵の上苙(うえおろ)は、奇蹟の証明として「人知の及ぶあらゆる可能性を全て否定できれば、それはもう人知を超えた現象」(P.86)、「あらゆる自然、あらゆる人為による可能性を否定できれば、それはすなわち超自然ということになる」(P.87)と定義する。

そこに以前から敵対している元検事の大門が登場し、すべての可能性を否定することはできないとし、2人の対決が始まる。

大門は荒唐無稽で馬鹿馬鹿しくとも可能性があるトリックを披露し、上苙はそれを否定するというルールになる。

 

推理小説として探偵が推理をし、解決するのはもちろんだが、それを対決する相手として犯人ではなく第三者というのは初めて出会った作品であった。

大門だけではなく、あと3人の刺客が出てくるが、どれも「可能性は低そうだけど理屈ではできそう」なトリックを用意してくるが、上苙は見事に論理で退けてしまう。

一つの事件を取り扱う中で、短編集のような構図でもあるが、最後の対決では「否定の否定」という矛盾との闘いで繋がり、難しいながらも面白かった。

 

最後に、この事件が本当に奇蹟が起きたのかはぜひ読んで確認してほしい。

 

 

 

【あらすじ】早朝始発の殺風景 青崎有吾【感想】

 早朝始発の殺風景 青崎有吾

 

鮎川哲也賞を受賞したデビュー作 体育館の殺人 を書いた青崎有吾の短編集

高校生が織りなす5つの短編は、1つのシチュエーションでミステリーを完成させている

全ての話は、ちょっとした違和感が謎を呼び、それを解いていくという形で、日常の謎に分類される内容

6つ目はエピローグで、表題作の 早朝始発の殺風景 の登場人物を主に、これまでの短編の登場人物が少しずつ出てくる大団円になっている。

 

以下、ネタバレを含む内容になっております。未読の方はご注意ください。

 

 

 

早朝始発の殺風景

ある理由のために始発に乗り込んだ男子高校生

駅は閑散としていて乗客は誰もいないと思っていたら、あまり話したことのないクラスメイトの女の子が乗っていた。

学校に行くには早すぎる時間に、たまたま乗り合わせた2人。

一体なぜ、こんな時間に電車に乗っているのか。

互いのスマホを交換して情報を得ることによって、2人の物語が進んでゆく。

 

メロンソーダ・ファクトリー

学校帰りのファミレスで、文化祭で着るクラスTシャツのデザインを考える女子高生3人組。

人をカテゴライズするのが好きなノギちゃん

メロンソーダが好きすぎていつも飲んでいる詩子

詩子のお母さんのような真田

別のクラスメイトと真田の出した2つの案から選ぶことになったが、小学校からの付き合いである詩子と真田の意見が合わなかったことにより不穏な空気が広がる。

結論からいうと詩子は(ドラッグで表示)色覚異常で、赤色と緑色が見分けがつかない病気(ここまで)で、真田のデザインがわかりにくかった。

このほかにも、制服のリボン色が違うことや、中学時代の写生大会など伏線の張り方も素晴らしかった。

最後のクラスTシャツのデザイン案を決めるところも素晴らしく、帯に書かれた「謎を追いかけているうちに、気づけば彼らを好きになる」が一番伝わった。

 

夢の国には観覧車がない

部活の3年生追い出し会で訪れた幕張ソレイユランド。

後輩の伊鳥に誘われ、なぜか男2人で観覧車に乗ることになり2人きりになる寺脇。

なぜ伊鳥は寺脇と2人で観覧車に乗ろうとしたのかが、最後までずっと謎としてあり続ける。

これが解決したときに伊鳥の気遣いと用意周到さに気づき、それまで仲が良いとは言えなかった2人が仲良くなるきっかけになる。

チャンスを逃すことを例えた表現で、「観覧車の一番高い場所がいつかわかるか」という表現はすごく的を得ていていい表現だなと思った。

エピローグでは約束していたディズニーランドに2人で行っているシーンがあり、ほっこりできた。

 

捨て猫と兄妹喧嘩

妹が公園で猫を拾ったことを兄に相談したことから物語が始まる。

2人は両親が離婚したため、離れて暮らしている。

妹が暮らすマンションはペットを飼うことができず、元の家で暮らしている兄に飼えないか相談するといった内容。

他の作品に比べてミステリー色は少なめ。

それでも兄妹愛が慎ましくて読後感がとても良い。

ただ、飼えないペットを捨てるのはだめですよ。

 

三月四日、午後二時半の密室

高校の卒業式のあと、クラス委員の草間が、式を風邪で欠席した煤木戸へ卒業アルバムを届ける話。

クラスでは孤高の存在で周りと距離のあった煤木戸に会った草間は、煤木戸が仮病を使って卒業式を休んだのではないかと思い始める。

しかし、草間の前で薬を飲むなど仮病では危険な行為を目の当たりにし、煤木戸からもそこまでひねくれていないといわれる。

だが、帰り際になって部屋の違和感に気づき、煤木戸がついた嘘が草間によって暴かれる。

煤木戸も背伸びをしていた普通の女子高生で、草間とも何の変りもなかった。

煤木戸はちょっとした見栄で(ドラッグで表示)片付けてない自身の部屋ではなく、留守の姉の部屋で(ここまで)草間を迎えたのだった。

高校最後で仲良くなれた2人は、きっと大学に進んでも交流があったに違いない。

 

エピローグ

エピローグはその名の通り、全ての短編の後日談となっている。

これはぜひとも自身で読んでもらいたい。

 

青春の甘酸っぱさが詰まった、あの頃に戻りたくなる短編集だった。

 

 

 

 

【あらすじ】罪人の選択 貴志祐介【感想】

 

 

罪人の選択 貴志祐介

 

夜の記憶 呪文 罪人の選択 赤い雨 の4作が収録された短編集。

表題作の罪人の選択以外はSF作品となってます。

夜の記憶 呪文 はあらすじを書くと即ネタバレになってしまうため、ぜひ本を手に取って読んでください。

夜の記憶はデビュー前の作品で、貴志祐介の世界観の原点のような雰囲気を感じることができます。

呪文は紹介文によると、長編SF作品新世界よりのあとに発表された作品で、物語の雰囲気もなんとなく似ているような気がします。

 赤い雨もSF作品で、チミドロと呼ばれる新生物によって地球の生命環境が激変し、赤く染まった世界となった。

チミドロによる不治の病RAINの治療法を見つけるために、努力する主人公の話。

近未来SFのような、近い将来に起こるのではないかというような状況で、その場面を想像するのが容易になるほど引き込まれます。

 

そして表題作である、罪人の選択

終戦後のごたごたした時代に、妻を寝取られた男が間男に対して二つの選択をさせる。

ひとつは密造酒で、もうひとつは男の家で作られたフグの卵巣の缶詰。

どちらかのひとつには毒が入っているという。

「正解は、おまえへの感謝。毒入りの方は、お前に対する憤りだ」

このヒントを基に、どちらかを口にする選択を迫られる。

 

また、18年後にも同じ選択を迫る男女が現れる。

男は女の妹を弄び、自殺に追い込んだのだった。

またも選択するのは密造酒と缶詰。

「十八年は、古い恨みをぬぐい去るにも、新たな怨念を生み出すにも、十分な年月なのよ。これがヒント」

 

生きるか死ぬかの選択を二人はどう判断したのか。

ふたつのヒントの意味と、選択の結果はどうなったのだろうか。

 

 以下、ネタバレを含みますので未読の方はご注意ください。

 

 

 

18年前は戦後で食べ物にも困っていた時期に妻を助けたこともあって、缶詰が正解。

単純に考えればそうなのかもしれないが、祝い事の風習など深読みが始まれば答えを出すのは簡単ではなかったかもしれない。

銃で脅されてどちらか選べでは、正常な判断は難しいと思う。

 

現代のほうは、密造酒に入っていた毒が重曹等により無害化。

逆に缶詰内にボツリヌス菌が発生して缶詰が毒入りと変化している。

女のヒントを考えると18年前と現代では答えが入れ替わっていることに気づくことができる。

また、コップの破片を見つけることや、密造酒の中身が減っていることなどから、18年前は密造酒を選んで失敗していることがわかる。

男はヒントを考慮せず、上記の点にのみ注目したため缶詰を選ぶこととなった。

 

片方は深読みをしたため、片方はヒントを考慮しなかったためと、こちらも相反するいきさつをもった内容で、鏡写しのようになりながらも最後は同じ結末を迎えるというところに面白さを感じた。

貴志祐介といえば私が読書をするようになったきっかけが 新世界より だったこともあり、今でも大好きな作家だ。

ホラー小説からのデビューだが、ミステリーでもとても面白い作品を出されているので、今後も注目していきたいと思う。

 

 

 

【感想】儚い羊たちの祝宴 米澤穂信

 

 儚い羊たちの祝宴 米澤穂信

 

この記事はネタバレを含みます。

 

あらすじはこちら

 

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以下、ネタバレを含みますのでご注意ください。

 

 

 

 

 

 

身内に不幸がありまして

夕日と、その家のお嬢様の吹子との友情の物語。

と思いきや、それが覆されるミステリーの醍醐味を満喫させてくれるラストにつながる。

表題である「身内に不幸がありまして」は、どんなことであろうと断ることのできる魔法の言葉である。

ただし、これが嘘であったら二度と信用されなくなるだろう。

 

バベルの会の夏合宿を理由なく断れないがために、兄の襲撃事件を利用して身内を殺害する発想は驚きだった。

きっと夏合宿を楽しみにしていたのは本当なのだろうが、その様子をしっかり表現されていたので上記の理由になるとは思わなかった。

作中に登場する小説を知っていれば、真相にも気づきやすく、もっと楽しめたかもしれない。

本書の中で、最後の一行にぞくっときたのはこの短編。

 

北の館の罪人

北の館が存在する理由や、早太郎の不思議なお使いの内容に気を取られ、あまりが六綱家に対して復讐心を持っていることに気づかなかった。

自己主張が少なく、感情表現も少ないので気づきにくくしているのだろうが、愛人の子として不遇の人生を歩んできていたのであれば当然か。

あまりからヒ素による殺害に気づき、自分の髪の毛を絵の中に残し、あまりの手の届きにくい本館に飾らせることで証拠を残す方法は素晴らしい。

さらに、色彩が変化する青であまりの手を塗り、時間とともに赤に染めるのも秀逸。

「殺人者は赤い手をしている。しかし彼らは手袋をしている。」

この言葉を再現し、死してなお、あまりに対して罪を告発したところは非常に痛快であった。

この作品でもほんの少しだけバベルの会が登場する。

 

山荘秘聞

ミステリーには3つの謎があるが、その中でもフワイダニットを取り扱っている。

二重人格のような矛盾する行動に不安感をあおられ、最後がどうなるのだろうかとハラハラしたが、いびつながら一貫した理由に驚きながらも満足させられた。

一種のプライドというか、使命感もここまでくるとこうなるのかと面白かった。

こちらもバベルの会は存在だけが出てくる。

 

玉野五十鈴の誉れ

こちらも地元で名のある家計の話で、後継者問題を抱えている。

本人には関係ない理不尽な理由で監禁されるが、弟が焼却炉で死んでしまう事故のおかげで解放される。

五十鈴との思い出、監禁状態、天国と地獄の両方を見せられ、心苦しいが、理不尽から救われて本当に良かった。

ご飯の炊き方を歌にした「始めちょろちょろ、中ぱっぱ。赤子泣いても蓋取るな」

今では蓋を取っても大丈夫らしい。

それより、焦がさないようにしっかり確認した方が正確らしい。

五十鈴がやったとは、証拠も状況も何もないが、純香を救ったのは五十鈴だと信じたくなる。

純香が大学で所属したのはバベルの会。

「身内に不幸がありまして」の吹子とは同時期だったのかは定かではないが、こちらでも登場している。

 

儚い羊たちの晩餐

これまで少しずつ顔を出してきた「バベルの会」が主として登場してくる。

バベルの会とは、幻想と現実とを混乱してしまう儚い者たちの聖域であるという。

心の奥底に夢想家の自分を抱え、物語的な膜を通して現実と向き合っている人が集う会。

バベルの会に属する会員とのコネを作るために入会していた鞠絵は、実際家と言われ除名される。

ちょっとした復讐のため、彼女らをアルミスタン羊と称し、厨娘・夏に食材として用意させる。

感想を書くにはこの短編はとても難しい。

鞠絵の後悔がどこにあるのか。

バベルの会なのか、祖父のこと、父のこと、生活が変わったこと。

バベルの会の存在理由がわかるようになったとあるから、厳しい苦しい現実を受け入れることができず、夢想に走った今だからこそバベルの会を欲したのであろう。

 

 

【あらすじ】儚い羊たちの祝宴 米澤穂信

 

 

 儚い羊たちの祝宴 米沢穂信

 

ミステリの醍醐味と言えば、終盤のどんでん返し。

中でも、「最後の一撃」と呼ばれる、ラストで鮮やかに真相を引っ繰り返す技は、短編の華であり至芸でもある。

本書は、更にその上をいく、「ラスト一行の衝撃」に徹底的にこだわった連作集。

古今東西、短編集は数あれど、収録作すべてがラスト一行で落ちるミステリは本書だけ!

(本書の帯より引用)

 

本書は5作の短編からなっており、ほとんどが一人の女性による独白という物語の構成となっている。

 

 

身内に不幸がありまして

地方の大勢力を持つ家の使用人とその家の娘との、立場を超えた友情と出来事による物語

 

北の館の罪人

愛人の子として生まれ育ち、母が亡くなった折に愛人の元でお世話になることになる。

その家には本館とは別に別館があり、古株の使用人たちは「北の館」

そこに住むことになり、「先客」の世話をすることになる。

その「北の館」に入ることには大きな意味があるのだった。

 

山荘秘聞

この世の天国とも思われる八垣内に立つ別荘、飛鶏館。

持ち主の奥方が亡くなられたこともあって、管理人を務めてから1年の間、誰も訪れることがなかった。

ある日、一人の登山者が滑落しているところを発見することにより、彼女の秘密が始まる。

 

玉野五十鈴の誉れ

一族の絶対的な権力者の祖母から、15の誕生日に付き人をもらい受ける。

付き人の五十鈴と付き合うようになり、人間らしい表情や感情を出せるようになった。

後継者であった主人公は、ある出来事がきっかけにその座を失い、また弟が生まれたことによって完全に不要な存在となってしまった。

ひどい扱いを受け、しまいには毒酒を飲むよう言い渡される主人公。

そんな状況にあっても心の支えとなったのは五十鈴の存在だけだった。

 

儚い羊たちの晩餐

荒廃したサンルームに置かれた一冊の日記。

その中には、書き手の家に招かれた宴会での料理しか作らない厨娘(ちゅうじょう)と、成金の父親の見栄、除名された読書会「バベルの会」について書かれていた。

日記の最後に書かれている厨娘のアミルスタン羊料理の秘密とは。

 

 

全編にわたって庶民とは違った、上流階級に属する家が登場する。

語り手は短編によって様々だが、現実離れした世界観が独特。

また、帯にある「ラスト一行の衝撃」だが、ラスト一行の衝撃というより、ラストに収束するまでの過程が非常に面白い。

どの短編もラストまでたどり着いたときに、ぞくぞくする感覚はぜひ味わってほしい。

 

 

 

【感想】びっくり館の殺人 綾辻行人

 

 びっくり館の殺人 綾辻行人

 

 

この記事はネタバレを含みますので、ご注意ください。

 

あらすじはこちら

 

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以下、ネタバレを含みます。

 

 

 

 

児童書でありながら館シリーズの正統続編。

どんなものかと楽しみに読んでみたが、満足の一冊だった。

小説内の小説として登場する「迷路館の殺人」を手にすることにより物語が始まる。

迷路館の殺人を読んでいれば、「事実を元にしたフィクション」とされている真実を知っていることに、ちょっとしたカタルシスを感じるのではないでしょうか。

 

主人公 三知也が引っ越した先にあるお屋敷 びっくり館で起こった悲劇。

三知也自身も兄がいじめを苦に自殺をして家族がバラバラになったという経緯もあり、あやしい噂のあるびっくり館にも通うことができたのだろう。

よくある尾ひれのついた噂の中からすこしずつ明かされる真実に、気味の悪さを感じながらも読み進めずにはいられなかった。

 

作品で使用されるトリックとしては単純な”密室”であり、いつも特徴的な館が登場するが、今回は7色に彩られたびっくり箱が登場するのみ。

そのため、いわくつきの館というよりは、今回のトリックのために存在するようなかたちで登場した。

そのびっくり箱のしくみも中盤には明かされており、死体が発見された密室の謎は、勘のいい読者にはすぐに気づかれるようなかたちであった。

ちなみに私は、”楽しい催し物”の不気味さのおかげで気づいておらず、読み終えたあとに、あぁ…とため息を漏らしてしまった。

なので、まさかリリカの人形に俊生が変装してる(させられてる)とは思わず、三知也ら発見者による密室の偽装だとは気づけなかった。

そういえば館シリーズにはなかったパターンなので、注意して読むべきだったかもしれない。

 

本書は必然的に事件のその後にもフォーカスされており、三知也がこの事件を記憶の奥底にとどめていた理由もわかるようになる。

真実を知る者のうち、一人は阪神淡路大震災でなくなり、もう一人は遠距離ということもあり疎遠になったため自然とそうなっていった。

フィクションを読んでいるのに、現実の出来事を取り入れる方法は、読者をはっとさせつつ、納得もさせられるのでとても上手な方法だと思う。

 

再びびっくり館を訪れ、俊生らと再会したのがリリカの誕生日6月6日。

少し雰囲気が変わってしまった俊生と、うすら寒い過去の出来事が現在にまで手を伸ばしてきた怖さを最後の最後まで味わうこととなった。

 

小説を本当の最後まで読ませてしまうのは、さすが綾辻さんといったかんじ。

もし自分の推理小説の最初の出会いがこれであれば、簡単にこの世界に吸い込まれていただろうと思う。

館シリーズファンはもちろん、小学生の年代にも読んでほしいなと思った作品でした。

 

 

 

【あらすじ】びっくり館の殺人 綾辻行人

 

 

たまたま立ち寄った古本屋で手に取った一冊の推理小説迷路館の殺人

作者の鹿谷門実の近影、作中に出てくる建築家・中村青司の名前に目が止まる。

そのとき、心の奥底にしまい込んでいた遠い日の思い出がよみがえる。

小学6年の時、引っ越した先にあった「びっくり館」と呼ばれるお屋敷。

お屋敷には様々な噂があったが、突然住民が戻ってきた。

そこに住んでいるのはサンタクロースのような老人に、同い年だが学年は1つ下の俊生と、風変わりな人形「リリカ」。

クリスマス会に招待されびっくり館に向かったが、「リリカの部屋」で起こった密室殺人の第一発見者となってしまった。

 

同い年なのに学年は1つ下で、体の弱い俊生。

奇妙な腹話術人形のリリカ。

2年前に起こったという殺人事件の真相。

リリカの部屋の壁に備えられた7色からなる28個のびっくり箱。

 

あやしげな雰囲気からなる密室殺人のミステリー。

 

綾辻行人の大人気シリーズである「館の殺人」シリーズの第8作目。

これまでのシリーズとは違い、講談社 ミステリーランドで刊行され、漢字には全てルビがふってあり、図書館でも児童書として取り扱われています。

ただし、油断することなかれ。

シリーズファンにもしっかりと満足させる内容です。

ルビのおかげで小学校中学年くらいの子でも読めると思うので、推理小説の入門としてはちょうどよい作品です。

 

現在は文庫版、電子書籍でも発表されているので、大人の方はそちらをお求めになる方がいいかもしれません。

 

 

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