【感想】びっくり館の殺人 綾辻行人
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以下、ネタバレを含みます。
児童書でありながら館シリーズの正統続編。
どんなものかと楽しみに読んでみたが、満足の一冊だった。
小説内の小説として登場する「迷路館の殺人」を手にすることにより物語が始まる。
迷路館の殺人を読んでいれば、「事実を元にしたフィクション」とされている真実を知っていることに、ちょっとしたカタルシスを感じるのではないでしょうか。
主人公 三知也が引っ越した先にあるお屋敷 びっくり館で起こった悲劇。
三知也自身も兄がいじめを苦に自殺をして家族がバラバラになったという経緯もあり、あやしい噂のあるびっくり館にも通うことができたのだろう。
よくある尾ひれのついた噂の中からすこしずつ明かされる真実に、気味の悪さを感じながらも読み進めずにはいられなかった。
作品で使用されるトリックとしては単純な”密室”であり、いつも特徴的な館が登場するが、今回は7色に彩られたびっくり箱が登場するのみ。
そのため、いわくつきの館というよりは、今回のトリックのために存在するようなかたちで登場した。
そのびっくり箱のしくみも中盤には明かされており、死体が発見された密室の謎は、勘のいい読者にはすぐに気づかれるようなかたちであった。
ちなみに私は、”楽しい催し物”の不気味さのおかげで気づいておらず、読み終えたあとに、あぁ…とため息を漏らしてしまった。
なので、まさかリリカの人形に俊生が変装してる(させられてる)とは思わず、三知也ら発見者による密室の偽装だとは気づけなかった。
そういえば館シリーズにはなかったパターンなので、注意して読むべきだったかもしれない。
本書は必然的に事件のその後にもフォーカスされており、三知也がこの事件を記憶の奥底にとどめていた理由もわかるようになる。
真実を知る者のうち、一人は阪神淡路大震災でなくなり、もう一人は遠距離ということもあり疎遠になったため自然とそうなっていった。
フィクションを読んでいるのに、現実の出来事を取り入れる方法は、読者をはっとさせつつ、納得もさせられるのでとても上手な方法だと思う。
再びびっくり館を訪れ、俊生らと再会したのがリリカの誕生日6月6日。
少し雰囲気が変わってしまった俊生と、うすら寒い過去の出来事が現在にまで手を伸ばしてきた怖さを最後の最後まで味わうこととなった。
小説を本当の最後まで読ませてしまうのは、さすが綾辻さんといったかんじ。
もし自分の推理小説の最初の出会いがこれであれば、簡単にこの世界に吸い込まれていただろうと思う。
館シリーズファンはもちろん、小学生の年代にも読んでほしいなと思った作品でした。