【あらすじ】儚い羊たちの祝宴 米澤穂信
儚い羊たちの祝宴 米沢穂信
ミステリの醍醐味と言えば、終盤のどんでん返し。
中でも、「最後の一撃」と呼ばれる、ラストで鮮やかに真相を引っ繰り返す技は、短編の華であり至芸でもある。
本書は、更にその上をいく、「ラスト一行の衝撃」に徹底的にこだわった連作集。
古今東西、短編集は数あれど、収録作すべてがラスト一行で落ちるミステリは本書だけ!
(本書の帯より引用)
本書は5作の短編からなっており、ほとんどが一人の女性による独白という物語の構成となっている。
身内に不幸がありまして
地方の大勢力を持つ家の使用人とその家の娘との、立場を超えた友情と出来事による物語
北の館の罪人
愛人の子として生まれ育ち、母が亡くなった折に愛人の元でお世話になることになる。
その家には本館とは別に別館があり、古株の使用人たちは「北の館」
そこに住むことになり、「先客」の世話をすることになる。
その「北の館」に入ることには大きな意味があるのだった。
山荘秘聞
この世の天国とも思われる八垣内に立つ別荘、飛鶏館。
持ち主の奥方が亡くなられたこともあって、管理人を務めてから1年の間、誰も訪れることがなかった。
ある日、一人の登山者が滑落しているところを発見することにより、彼女の秘密が始まる。
玉野五十鈴の誉れ
一族の絶対的な権力者の祖母から、15の誕生日に付き人をもらい受ける。
付き人の五十鈴と付き合うようになり、人間らしい表情や感情を出せるようになった。
後継者であった主人公は、ある出来事がきっかけにその座を失い、また弟が生まれたことによって完全に不要な存在となってしまった。
ひどい扱いを受け、しまいには毒酒を飲むよう言い渡される主人公。
そんな状況にあっても心の支えとなったのは五十鈴の存在だけだった。
儚い羊たちの晩餐
荒廃したサンルームに置かれた一冊の日記。
その中には、書き手の家に招かれた宴会での料理しか作らない厨娘(ちゅうじょう)と、成金の父親の見栄、除名された読書会「バベルの会」について書かれていた。
日記の最後に書かれている厨娘のアミルスタン羊料理の秘密とは。
全編にわたって庶民とは違った、上流階級に属する家が登場する。
語り手は短編によって様々だが、現実離れした世界観が独特。
また、帯にある「ラスト一行の衝撃」だが、ラスト一行の衝撃というより、ラストに収束するまでの過程が非常に面白い。
どの短編もラストまでたどり着いたときに、ぞくぞくする感覚はぜひ味わってほしい。