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読書したいけど読みたい本が見つからない人のためにあらすじを紹介して読書の参考にしてもらいたいです。

【あらすじ】罪人の選択 貴志祐介【感想】

 

 

罪人の選択 貴志祐介

 

夜の記憶 呪文 罪人の選択 赤い雨 の4作が収録された短編集。

表題作の罪人の選択以外はSF作品となってます。

夜の記憶 呪文 はあらすじを書くと即ネタバレになってしまうため、ぜひ本を手に取って読んでください。

夜の記憶はデビュー前の作品で、貴志祐介の世界観の原点のような雰囲気を感じることができます。

呪文は紹介文によると、長編SF作品新世界よりのあとに発表された作品で、物語の雰囲気もなんとなく似ているような気がします。

 赤い雨もSF作品で、チミドロと呼ばれる新生物によって地球の生命環境が激変し、赤く染まった世界となった。

チミドロによる不治の病RAINの治療法を見つけるために、努力する主人公の話。

近未来SFのような、近い将来に起こるのではないかというような状況で、その場面を想像するのが容易になるほど引き込まれます。

 

そして表題作である、罪人の選択

終戦後のごたごたした時代に、妻を寝取られた男が間男に対して二つの選択をさせる。

ひとつは密造酒で、もうひとつは男の家で作られたフグの卵巣の缶詰。

どちらかのひとつには毒が入っているという。

「正解は、おまえへの感謝。毒入りの方は、お前に対する憤りだ」

このヒントを基に、どちらかを口にする選択を迫られる。

 

また、18年後にも同じ選択を迫る男女が現れる。

男は女の妹を弄び、自殺に追い込んだのだった。

またも選択するのは密造酒と缶詰。

「十八年は、古い恨みをぬぐい去るにも、新たな怨念を生み出すにも、十分な年月なのよ。これがヒント」

 

生きるか死ぬかの選択を二人はどう判断したのか。

ふたつのヒントの意味と、選択の結果はどうなったのだろうか。

 

 以下、ネタバレを含みますので未読の方はご注意ください。

 

 

 

18年前は戦後で食べ物にも困っていた時期に妻を助けたこともあって、缶詰が正解。

単純に考えればそうなのかもしれないが、祝い事の風習など深読みが始まれば答えを出すのは簡単ではなかったかもしれない。

銃で脅されてどちらか選べでは、正常な判断は難しいと思う。

 

現代のほうは、密造酒に入っていた毒が重曹等により無害化。

逆に缶詰内にボツリヌス菌が発生して缶詰が毒入りと変化している。

女のヒントを考えると18年前と現代では答えが入れ替わっていることに気づくことができる。

また、コップの破片を見つけることや、密造酒の中身が減っていることなどから、18年前は密造酒を選んで失敗していることがわかる。

男はヒントを考慮せず、上記の点にのみ注目したため缶詰を選ぶこととなった。

 

片方は深読みをしたため、片方はヒントを考慮しなかったためと、こちらも相反するいきさつをもった内容で、鏡写しのようになりながらも最後は同じ結末を迎えるというところに面白さを感じた。

貴志祐介といえば私が読書をするようになったきっかけが 新世界より だったこともあり、今でも大好きな作家だ。

ホラー小説からのデビューだが、ミステリーでもとても面白い作品を出されているので、今後も注目していきたいと思う。