【あらすじ】クルス機関 柏木伸介【感想】
クルス機関 柏木伸介
“歩く一人諜報組織"=《クルス機関》の異名を持つ神奈川県警外事課の来栖惟臣(くるすこれおみ)は、日本に潜入している北朝鮮の工作員が大規模テロを企てているという情報を得る。
違法な囮捜査を駆使して工作員を追う来栖。
一方そのころ、北の関係者と目される者たちが口封じのため次々と暗殺されていた。
暗殺者の名は、呉宗秀(オ・ジョンス)。
日本社会に溶け込み、冷酷に殺戮を重ねる呉だったが、彼の元に謎の女子高生が現れてから、歯車が狂い始め――。
桜木町、福富町、寿町、石川町――横浜を舞台に、神奈川県警・公安のエースと孤高の工作員が静かに火花を散らす。
一匹狼である外事課の来栖が、北朝鮮の工作員である呉宗秀が実行しようとしているテロを防ごうとするストーリー。
来栖が集めた情報を上に報告した途端に、情報の関係者が消されるという出来事から、警察内部も信用できず一人で調査を続ける。
その様子はゲームではあるが、メタルギアシリーズのスネークを思わせるような内容であった。
また、犯行側の呉宗秀の視点もあり、両面から事件を追っていくかたちとなっている。
しかし、工作員ということもあって計画の全貌を知らされていないため、読者には最後までどういったテロなのかはわからないようになっている。
大変な苦労を強いられた出自から、冷酷な暗殺者に育てられていたが、潜伏先で優しい人間性に触れ、迷いが生じてくる人間ドラマもある。
このミステリーがすごい!の優秀賞受賞作品で続編もあるが、この作品だけでみれば結末がブツ切り状態で、読後感というものはなかった。
来栖の違法捜査で少しずつ情報を集めていく様は面白かったが、一旦の区切りとしてはオチが欲しかったように思えた。
別記事で投稿した「スマホを落としただけなのに」で本作を知ったが、このミスに名を連ねる作品はどれも面白いなと思う。
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