【あらすじ】ブラック・ヴィーナス 城山真一【感想】
ブラック・ヴィーナス 投資の女神 城山真一
金に困っている人を助けたいという思いでメガバンクに就職したが、その内情に失望して三年で退職した百瀬良太。
良太は、零細企業を営む兄の金策の過程で“黒女神"、二礼茜と知り合う。
茜は目的のためなら手段を選ばない株取引のエキスパートで、依頼人が本当に大切に思っているものと引き換えに大金をもたらす。
兄が必要な資金を得るかわりに、良太は茜の助手を務めることとなった。
社屋建設費用の借金に苦しむ老舗和菓子屋社長、薬物中毒で死亡した人気歌手の娘の死因を隠そうとする父親など、さまざまな人物が茜を訪ねてくる。
茜はなぜこのような活動をしているのか。金を通じて人の心を描き出す。
以下、一部ネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください。
中小企業の経営者の中で噂されている存在があった。
それは一番大切なものと引き換えにお金を用意してくれる「黒女神」がいるという。
会社の資金繰りに困った百瀬の兄が黒女神とコンタクトをとると聞き、同席することになった。
実際にお金を準備してもらった話もあるが、投資詐欺にあったという悪いうわさもあり、真偽を確かめようとした百瀬。
現れた女性は噂通りの出で立ちで、兄の会社を救ってくれた。
その引き換えとして、兄の会社の古い機械と百瀬が助手となることになった。
「黒女神」こと二礼茜と百瀬は、老舗和菓子屋や有名アーティストの父などを救っていく。
それはただお金を用意するだけでなく、なぜお金を欲しているのかを見極め、その先の願望さえを叶えてしまう。
老舗和菓子屋には自由を、有名アーティストの父には守りたいものを。
2016年このミステリーがすごい!大賞受賞作で、世に出た書籍。
ずっと読みたいリストに入っていたが、なかなか順番が回ってこなくて、4年たってようやく読むことができた。
茜がどのようにして株取引でお金を作っているのかは最後以外、ほとんど話には出てこないので気になるが、本作はなぜお金が必要なのかに謎を置いているので重視するところではない。
どの登場人物もお金が必要な理由を悩みながらも答えるが、その本質的な理由については話さず、茜に見透かされて、そちらも解決してもらってしまう。
誰しも何かを望んでお金を望むが、その本質的なものに関しては見えてこなかったりする。
しかし、小さなヒントを手掛かりに茜は本質に気づき、その解決に導いてくれる。
正直、これをミステリーといわれてもどうなのだろうと思ってしまうが、ミステリーの定義自体が広くあいまいなものであるので、受け手次第なのかなと思う。
ストーリーの設定や前半部分は面白かったが、後半にかけてはやや尻つぼみ。
話を大きくしようとしすぎたせいか、置いてけぼりにされてしまったような感じがしてしまった。
まいた種を一気に回収しようとしすぎて、どれもこれも中途半端になりすぎたように感じる。
やくざを抜けるために資金を準備したのに、結果的にやくざ的仕事をさせてしまったのは可哀そうな気もするし、元官僚へのスキャンダルも都合が良すぎるように思えた。(茜が仕組んだ描写はないのでたまたまなのかもしれないが、茜の兄の選挙区ということはそういうことだと読者は思ってしまう)
読み終えてから時間が経っているので、なぜ10億円を15億円に増やさなきゃいけなかったのかも思い出せない。
続編が出ているようだけど、正直ちょっと読まなくてもいいかなと思ってしまっている。